金属加工の表面処理とは?種類・目的とめっき・アルマイト・黒染めの選び方

金属部品は、切削加工を行った状態のまま使用するとは限りません。さびや摩耗を防いだり、外観を整えたりするために、加工後の部品へ表面処理を施すことがあります。

代表的な表面処理には、めっき、アルマイト、黒染め、塗装などがあります。それぞれ対応できる材質や得られる効果が異なるため、部品の用途や使用環境に合った処理を選ぶことが重要です。

また、表面処理によって部品の寸法が変化することもあります。精密部品では、機械加工だけでなく、処理後の膜厚まで考慮して図面や公差を決めなければなりません。

この記事では、金属加工における表面処理の目的、代表的な種類、選び方、依頼時の注意点について解説します。

目次

金属加工における表面処理とは

表面処理とは、金属部品の表面へ皮膜を形成したり、表面の性質を変化させたりする加工です。

素材そのものを変更せず、部品の表面へ必要な機能を加えられることが特徴です。

例えば、鉄は強度や加工性に優れていますが、そのままでは水分や湿気によってさびる可能性があります。そこで亜鉛めっきや黒染め、塗装などを施し、使用環境に応じた防錆性能を持たせます。

アルミには、耐食性や耐摩耗性、外観を向上させるためにアルマイト処理が用いられます。

表面処理を行う主な目的

さびや腐食を防ぐ

金属は、水分、湿気、塩分、薬品などの影響によって腐食することがあります。

部品表面に保護皮膜を形成することで、金属と外部環境が直接触れにくくなり、さびや腐食を抑えられます。

屋外設備、産業機械、自動車部品、水分の影響を受ける装置などでは、使用環境に適した防錆処理が必要です。

摩耗や傷に強くする

部品同士が接触する箇所や繰り返し動作する箇所では、摩擦による摩耗が発生します。

硬質クロムめっきや硬質アルマイトなどを用いることで、表面の硬さや耐摩耗性を高められる場合があります。

外観を整える

表面処理は、部品の色、光沢、質感を整える目的でも使用されます。

黒色アルマイト、黒染め、装飾めっき、塗装などを施すことで、機能性だけでなく意匠性も向上させられます。

必要な機能を付与する

表面処理によって、次のような機能を部品へ付与できる場合があります。

  • 電気を通しやすくする
  • 電気を通しにくくする
  • 摩擦を抑える
  • 塗装の密着性を高める
  • 光の反射を抑える
  • 汚れを付着しにくくする
  • 熱や薬品に対する耐性を高める

必要な機能は部品によって異なるため、処理名だけでなく、使用目的から選定することが大切です。

代表的な表面処理の種類

表面処理主な対象材質主な目的
亜鉛めっき鉄・鋼材防錆、外観向上
無電解ニッケルめっき鉄、ステンレス、アルミなど耐食性、耐摩耗性、均一な皮膜
硬質クロムめっき鉄・鋼材など耐摩耗性、硬度、摺動性
アルマイトアルミ・アルミ合金耐食性、耐摩耗性、着色
黒染め鉄・鋼材防錆、黒色化、反射防止
塗装鉄、アルミなど防錆、耐候性、着色
研磨ステンレス、アルミなど表面調整、外観、粗さ改善

実際の適否は、材質、形状、膜厚、使用環境、必要精度によって異なります。

めっき処理とは

めっきは、金属部品の表面に別の金属皮膜を形成する処理です。

防錆、耐食性、耐摩耗性、導電性、装飾性など、目的に応じてさまざまな種類が使い分けられます。

亜鉛めっき

亜鉛めっきは、鉄鋼部品の防錆を目的として広く使用される表面処理です。

ボルト、ブラケット、機械部品、自動車部品などに用いられます。比較的採用しやすい防錆処理ですが、使用環境や必要な耐食性に応じて、皮膜や後処理を選ぶ必要があります。

全国鍍金工業組合連合会でも、亜鉛めっきは鉄の防食に使用される代表的な方法として紹介されています。電気めっきの種類と特色

無電解ニッケルめっき

無電解ニッケルめっきは、化学反応を利用してニッケル皮膜を形成します。

電気めっきと比較して、複雑な形状でも比較的均一な膜厚を得やすいことが特徴です。

寸法精度を考慮したい精密部品、金型、機械部品などに使用されます。ただし、処理後は皮膜分だけ寸法が変化するため、はめ合い部や精密寸法では膜厚を考慮した加工が必要です。

硬質クロムめっき

硬質クロムめっきは、表面の硬さ、耐摩耗性、摺動性などを高める目的で使用されます。

シャフト、金型、油圧部品、摺動部品などに採用されます。

必要な膜厚や仕上げ精度によっては、めっき後に研磨や研削が必要になる場合があります。

アルマイト処理とは

アルマイトは、アルミニウムの表面に酸化皮膜を形成する処理です。正式には陽極酸化処理と呼ばれます。

アルミニウムやアルミニウム合金に使用され、鉄やステンレスには適用できません。

アルマイトの主な特徴

  • 耐食性を高められる
  • 表面の耐摩耗性を高められる
  • 絶縁性を付与できる
  • 着色できる
  • 外観を整えられる

一般的なシルバーアルマイトのほか、黒色アルマイト、カラーアルマイト、硬質アルマイトなどがあります。

日本アルミニウム協会では、アルマイトや塗装によってアルミニウムの耐食性や意匠性を高められると説明しています。アルミニウムの表面処理

アルマイトの注意点

アルミ合金の種類によって、処理後の色や仕上がりが異なる場合があります。

また、皮膜形成によって寸法が変化するため、精密な穴、軸、ねじ、はめ合い部分では注意が必要です。処理したくない部分には、マスキングの指示が必要になることもあります。

黒染め処理とは

黒染めは、鉄鋼部品の表面に黒色の酸化皮膜を形成する処理です。

黒色酸化処理や四三酸化鉄皮膜処理と呼ばれることもあります。

黒染めの主な特徴

  • 部品を黒色に仕上げられる
  • 光の反射を抑えられる
  • 比較的寸法変化が小さい
  • 機械部品や治具に使用しやすい
  • 油分と組み合わせて防錆性を持たせられる

治具、工具、機械部品、精密部品などに使用されます。

黒染めの注意点

黒染めは、厚いめっき皮膜を形成する処理ではありません。屋外や水分の多い環境など、高い耐食性が必要な用途には適さない場合があります。

使用環境によっては、亜鉛めっき、ニッケルめっき、塗装などを検討する必要があります。

塗装とは

塗装は、金属部品の表面へ塗膜を形成する処理です。

色を付けるだけでなく、防錆、耐候性、耐薬品性、絶縁性などを持たせる目的でも使用されます。

代表的な方法には、次のようなものがあります。

  • 溶剤塗装
  • 粉体塗装
  • 焼付塗装
  • 電着塗装

大型部品や屋外設備にも使用しやすい一方、塗膜が厚くなる場合があります。精密な穴、ねじ、接触面などには、マスキングが必要です。

めっき・アルマイト・黒染めの違い

比較項目めっきアルマイト黒染め
主な対象鉄、ステンレス、アルミなどアルミ・アルミ合金鉄・鋼材
処理方法別の金属皮膜を形成アルミ表面を酸化鉄表面を酸化
主な目的防錆、耐摩耗、機能付与耐食、耐摩耗、着色黒色化、防錆、反射防止
寸法変化膜厚分を考慮皮膜形成を考慮比較的小さい
処理によって異なるシルバー、黒、カラー主に黒
注意点膜厚・密着性・材質との相性アルミに限定高耐食用途には不向きな場合がある

どの処理が優れているかではなく、材質と使用目的に合っているかが重要です。

表面処理を選ぶ7つのポイント

1.母材の種類

鉄、アルミ、ステンレス、真鍮、銅など、母材によって適用できる処理が異なります。

アルマイトは基本的にアルミ専用であり、黒染めは主に鉄鋼材料へ使用します。

2.使用環境

屋内、屋外、水分、塩分、薬品、高温など、部品が使用される環境を確認します。

同じ防錆目的でも、屋内設備と屋外設備では必要な耐食性が異なります。

3.必要な機能

防錆、耐摩耗、摺動性、絶縁性、導電性、外観など、表面処理に求める機能を明確にします。

4.処理後の寸法

めっきやアルマイトでは、処理によって部品の寸法が変化します。

精密な穴や軸では、処理後に公差内へ収まるよう、機械加工時の寸法を調整する必要があります。

5.マスキングの必要性

ねじ、接触面、圧入部、電気接点など、表面処理を避けたい箇所がある場合は、図面上でマスキング範囲を指定します。

6.外観と色調

外観部品では、色、光沢、つや、表面模様なども選定条件になります。

同じ処理でも、材質や表面状態によって色調が異なる場合があるため、必要に応じて限度見本を用意します。

7.コストと数量

表面処理費は、部品の大きさ、形状、数量、膜厚、マスキング、検査内容などによって変わります。

小ロットでは、処理単価だけでなく、最低処理費や運搬費も確認することが大切です。

表面処理を依頼するときに必要な情報

見積もりを依頼するときは、次の情報を図面や仕様書へ記載します。

  • 母材と材料規格
  • 希望する表面処理
  • 処理の目的
  • 必要な膜厚
  • 色や光沢
  • マスキング範囲
  • 処理後に保証する寸法
  • 使用環境
  • 数量
  • 希望納期
  • 検査成績書の要否

処理名が決まっていない場合は、「屋外で使用する」「さびを防ぎたい」「摩耗を抑えたい」など、目的と使用条件を伝えることで選定しやすくなります。

機械加工から表面処理まで一貫して依頼するメリット

機械加工と表面処理を別々の会社へ依頼すると、処理後の寸法、運搬、納期、品質確認などを発注者側で管理する必要があります。

一貫して依頼することで、次のようなメリットがあります。

  • 表面処理の膜厚を考慮して加工できる
  • 加工から処理までの納期を管理しやすい
  • 複数業者への発注作業を減らせる
  • 不具合発生時の確認先をまとめられる
  • 部品の用途に応じた工程を相談しやすい

精密部品では、切削加工と表面処理を別工程として考えるのではなく、完成寸法から逆算して工程を決めることが重要です。

広島市で機械加工から表面処理まで対応

広島市安芸区の宝栄工業株式会社では、NC旋盤、マシニングセンター、ワイヤーカット、平面研削盤などを使用した精密部品加工を行っています。

自社での機械加工と協力会社とのネットワークを組み合わせ、材料調達、切削加工、熱処理、表面処理まで一貫して対応します。

保有設備については、技術・設備ページをご覧ください。

対応する加工内容については、事業内容ページでご案内しています。

部品の用途に合った表面処理をご提案します

表面処理は、金属部品の防錆、耐摩耗性、外観、機能性を高める重要な工程です。

一方で、母材との相性、膜厚、処理後の寸法、マスキング範囲などを考慮せずに選ぶと、組み立てや部品性能に影響する可能性があります。

宝栄工業では、図面、材質、数量、使用目的などを確認し、協力会社と連携しながら加工工程を検討します。

広島市で精密金属加工や表面処理を含む部品製作をご検討の方は、お問い合わせページからご相談ください。

表面処理に関するよくある質問

表面処理の種類が決まっていなくても相談できますか?

部品の材質、用途、使用環境、必要な機能が分かればご相談いただけます。ただし、製品の安全性や機能に関する最終的な仕様決定は、設計者・発注者側で行う必要があります。

表面処理後も図面の公差を保証できますか?

保証の可否は、材質、形状、処理方法、膜厚、公差によって異なります。精密箇所は、処理後に保証する寸法であることを図面上に明記してください。

1個だけでも表面処理まで依頼できますか?

単品試作や小ロット部品についてもご相談いただけます。ただし、処理方法によって最低処理費や対応可能な数量が異なります。

めっきとアルマイトは同じ処理ですか?

異なります。めっきは表面へ別の金属皮膜を形成する処理です。アルマイトは、アルミニウム表面に酸化皮膜を形成する処理です。

黒染めは屋外でも使用できますか?

使用環境によっては防錆性能が不足する可能性があります。屋外や水分の影響を受ける場所では、めっきや塗装などを含めて検討します。

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