金属部品の図面には、寸法や公差だけでなく「Ra1.6」「Rz6.3」などの記号が記載されていることがあります。これは、加工面の滑らかさを示す「表面粗さ」の指定です。
完成した部品は一見滑らかに見えても、拡大すると表面には細かな山や谷があります。この凹凸の大きさは、部品の摩擦、密着性、耐摩耗性、外観などに影響します。
特に、軸と穴が接触する部分、部品同士を組み付ける面、液体や気体を密封する面などでは、寸法が公差内に収まっているだけでは十分とは限りません。用途に合った表面粗さに仕上げることが重要です。
この記事では、切削加工における表面粗さの意味、RaとRzの違い、図面での指定方法、加工方法による仕上がりの違い、見積もりを依頼するときの注意点をわかりやすく解説します。
表面粗さとは
表面粗さとは、金属部品の加工面に生じる細かな凹凸の状態を数値で表したものです。
NC旋盤やマシニングセンタ、フライス盤などで金属を削ると、工具の形状や送り量、回転数、材料の性質などによって、加工面に細かな削り跡が残ります。
見た目や手触りだけでは表面の状態を正確に判断できないため、表面粗さを数値で指定し、必要な仕上がりを加工会社へ伝えます。
一般的には、数値が小さいほど表面の凹凸が小さく、滑らかな仕上がりを意味します。ただし、すべての面を滑らかにすればよいわけではありません。
部品の用途によっては、潤滑油を保持するために一定の粗さが必要になる場合があります。塗装や接着を行う面でも、適度な凹凸が密着性に関係することがあります。
そのため、表面粗さは「小さいほど優れている」と単純に判断するのではなく、部品の用途や機能に合わせて指定することが大切です。
表面粗さが部品の性能に与える影響
表面粗さは、見た目だけでなく部品の機能や耐久性にも関係します。
摩擦や摺動性
軸、シャフト、ガイド、摺動部品など、ほかの部品と接触しながら動く部分では、表面の凹凸が摩擦に影響します。
表面が粗すぎると、接触する部品が摩耗しやすくなったり、動きが不安定になったりする場合があります。一方で、用途によっては潤滑油を保持するための適度な粗さが必要です。
密着性や気密性
フランジやシール面などでは、部品同士を密着させる必要があります。
表面の凹凸が大きいと隙間が生じ、液体や気体が漏れる原因になることがあります。必要な気密性や密着性に応じて、表面粗さを管理しなければなりません。
耐摩耗性
繰り返し接触する部品では、表面の状態が摩耗の進み方に影響します。
必要以上に粗い面は摩耗を早める可能性があるため、使用環境や相手部品との組み合わせを考慮した仕上げが必要です。
塗装・めっき・接着
塗装、めっき、接着などの表面処理を行う場合も、加工面の状態が仕上がりに影響します。
表面が滑らかすぎても粗すぎても、処理の密着性や外観に問題が生じることがあります。後工程まで考えて表面粗さを決めることが重要です。
外観品質
装置の外側に見える部品や、製品の意匠に関わる部品では、加工跡や傷が外観品質に影響します。
機能上は問題がなくても、見た目が重視される部品では、加工方向や仕上げ方法についても指定が必要になる場合があります。
Raとは
Raは「算術平均粗さ」と呼ばれる代表的な表面粗さの指標です。
測定した表面の凹凸について、平均線からの高さの差を平均して表します。局所的に大きな傷や深い谷があっても、測定範囲全体の平均値として評価されることが特徴です。
図面では、次のように表記されます。
- Ra6.3
- Ra3.2
- Ra1.6
- Ra0.8
数値が小さいほど、一般的には滑らかな仕上がりを求めていることになります。
Raは加工面全体の平均的な状態を確認しやすいため、機械部品の図面で広く使用されています。
ただし、Raだけでは、局所的に深い傷や大きな突起があるかどうかを十分に判断できない場合があります。そのため、部品の機能によってはRzなどの指標と組み合わせて指定します。
Rzとは
Rzは「最大高さ粗さ」と呼ばれる指標です。
基準となる長さの中で、最も高い山と最も深い谷の高さの合計を表します。平均的な状態を示すRaに対し、Rzは目立つ凹凸や局所的な傷の影響を受けやすい点が特徴です。
例えば、加工面の多くが滑らかでも、一部に深い傷があればRzの数値は大きくなる可能性があります。
密封性が必要な面や、局所的な傷を避けたい部品では、RaだけでなくRzの確認が重要になる場合があります。
なお、古いJIS規格と現在の規格では、Rzの意味が異なることがあります。古い図面を使用する場合は、どの規格を基準に作成された図面なのかを確認する必要があります。
RaとRzの違い
RaとRzは、どちらも表面の凹凸を表す指標ですが、評価する方法が異なります。
| 項目 | Ra | Rz |
|---|---|---|
| 名称 | 算術平均粗さ | 最大高さ粗さ |
| 評価内容 | 表面全体の平均的な凹凸 | 最も高い山と最も深い谷 |
| 特徴 | 全体的な滑らかさを判断しやすい | 局所的な傷や大きな凹凸の影響を受けやすい |
| 主な用途 | 一般的な加工面の評価 | 深い傷や突出した凹凸を管理したい面 |
RaとRzの数値は、単純に同じものとして換算できるとは限りません。
加工方法、工具の状態、材料、測定条件などによって表面の形状が変わるため、「Raがこの数値ならRzは必ずこの数値になる」とは判断できないからです。
図面でRaとRzの両方が指定されている場合は、それぞれの要求を確認したうえで加工方法を検討します。
表面粗さと寸法公差の違い
表面粗さと寸法公差は、どちらも精密部品の品質を決める重要な要素ですが、管理している内容が異なります。
寸法公差は、部品の長さ、直径、厚さなどに認められる寸法の範囲です。
例えば、直径20mmに対して「±0.01mm」と指定されている場合、完成寸法を19.99mmから20.01mmの範囲に収める必要があります。
一方、表面粗さは、その加工面にある細かな凹凸の状態を示します。
寸法が公差内に入っていても、表面が粗すぎれば、摩擦、密着、組み付けなどに問題が生じる可能性があります。反対に、表面が滑らかでも、寸法が公差から外れていれば部品として使用できません。
精密部品では、次の項目を分けて考える必要があります。
- 寸法が指定範囲に入っているか
- 平面度や平行度などの形状精度を満たしているか
- 必要な表面粗さに仕上がっているか
- 傷、打痕、バリなどがないか
用途によっては、これらを組み合わせて図面に指定します。
表面粗さと平面度の違い
表面粗さと平面度も混同されやすい項目です。
表面粗さは、加工面にある細かな凹凸を評価します。平面度は、対象となる面全体がどの程度正しい平面に収まっているかを評価します。
表面が滑らかでも、面全体が反っていれば平面度は良くありません。反対に、面全体の形状が平らでも、細かな工具跡が残っていれば表面粗さは大きくなります。
高い平面度と滑らかな仕上がりの両方が必要な部品では、切削加工後に平面研削加工を行うことがあります。
図面における表面粗さの指定方法
図面では、対象となる面に表面性状を示す記号を付け、RaやRzなどの数値を記載します。
表面粗さを指定するときは、次の内容を明確にすることが重要です。
- 対象となる面
- RaまたはRzなどの評価方法
- 必要な数値
- 加工方法の指定
- 加工方向
- 削り代
- 適用する規格
すべての面に同じ表面粗さを指定する必要はありません。
軸受との接触面、シール面、組み付け基準面など、機能上重要な部分に必要な粗さを指定し、それ以外の面には一般的な加工仕上げを適用する方法があります。
必要以上に細かな数値を指定すると、追加の仕上げ工程や検査が必要になり、加工費や納期に影響します。
どの程度の表面粗さが必要かわからない場合は、部品の用途や相手部品との関係を加工会社へ伝え、加工方法を相談することが大切です。
加工方法による表面粗さの違い
加工面の仕上がりは、使用する設備や加工方法によって異なります。
NC旋盤加工
NC旋盤は、材料を回転させながら工具を当てて削る加工方法です。
シャフト、フランジ、カラー、ピンなど、円筒形状の部品加工に適しています。回転数、送り量、工具の先端形状、切込み量などによって加工面の状態が変わります。
工具の送りによって規則的な加工目が残ることがあり、摺動面やシール面では用途に応じた仕上げ条件が必要です。
マシニング加工・フライス加工
マシニングセンタやフライス盤では、回転する工具を使用して材料を削ります。
平面、段差、溝、穴、ポケット形状など、幅広い加工に対応できます。使用する工具の種類、刃数、送り速度、工具経路などによって表面の模様や粗さが変わります。
外観を重視する面や部品同士が接触する面では、仕上げ加工の条件を分ける場合があります。
平面研削加工
平面研削加工は、回転する砥石を使って金属表面を少しずつ削り、高い平面度や寸法精度を目指す仕上げ加工です。
フライス加工後の工具跡を整えたい場合や、熱処理後に高精度な仕上げが必要な場合などに使用されます。
ただし、平面研削を行えばすべての要求を満たせるわけではありません。材質、硬度、形状、必要精度などを確認して工程を決める必要があります。
ワイヤーカット加工
ワイヤーカット加工は、細いワイヤ電極と放電を利用して金属を加工する方法です。
切削工具を直接当てないため、高硬度材や複雑な輪郭形状にも対応しやすい特徴があります。加工面には放電加工特有の状態が生じるため、必要な仕上がりによって加工条件や仕上げ回数を検討します。
表面粗さを左右する主な要因
同じ加工設備を使用しても、加工条件によって表面粗さは変化します。
工具の状態
摩耗した工具や刃先に欠けがある工具を使用すると、加工面が荒れたり、傷が発生したりする原因になります。
工具の状態を確認し、適切な時期に交換することが重要です。
送り量
一般的に、工具の送り量が大きいほど加工面に残る凹凸も大きくなる傾向があります。
ただし、送り量を小さくすれば必ず良好な面になるとは限りません。工具、材質、設備などに合った加工条件が必要です。
回転数と切削速度
回転数や切削速度が材料や工具に合っていない場合、むしれ、振動、工具摩耗などが発生し、加工面に影響することがあります。
切込み量
一度に削る量が大きすぎると、工具や材料にかかる負荷が増え、振動や変形につながる場合があります。
粗加工と仕上げ加工で条件を変え、最終的な寸法と表面状態を整えます。
材質
鋼、アルミ、ステンレス、銅、真鍮など、材質によって削りやすさや加工面の仕上がりが異なります。
同じ工具と加工条件でも、材質が変われば表面粗さが変わる可能性があります。
設備や治具の剛性
加工中に材料や工具が振動すると、加工面にびびり模様が発生することがあります。
材料を確実に固定し、形状に合った治具や加工条件を選ぶことが重要です。
表面粗さの指定が加工費に影響する理由
厳しい表面粗さを指定すると、通常の切削加工だけでは対応できず、追加の仕上げ工程が必要になる場合があります。
加工費に影響する主な理由は次のとおりです。
- 仕上げ加工の回数が増える
- 加工速度を調整する必要がある
- 工具交換の頻度が増える
- 研削などの別工程が必要になる
- 測定や検査に時間がかかる
- 加工不良のリスクが高くなる
- 外部の専門業者との連携が必要になる
すべての面へ厳しい表面粗さを指定すると、部品の機能に不要な工程まで増える可能性があります。
コストを抑えるためには、機能上重要な面と一般的な加工面を分け、必要な部分だけに適切な粗さを指定することが有効です。
見積もりを依頼するときに伝えたい情報
表面粗さを含む精密部品加工を依頼するときは、次の情報を準備すると見積もりや加工方法の検討がスムーズになります。
- 部品図面
- 材質
- 数量
- 必要な寸法公差
- 表面粗さを指定する面
- Ra・Rzなどの指定値
- 平面度や平行度などの幾何公差
- 熱処理の有無
- めっきやアルマイトなどの表面処理
- 部品の用途
- 相手部品との組み付け条件
- 希望納期
特に、古い図面では現在と異なる規格や記号が使われている場合があります。
表記の意味が不明な場合や、現在の加工方法で対応できるかわからない場合は、自己判断で変更せず、図面を加工会社に提示して確認することが大切です。
表面粗さを指定するときの注意点
必要以上に厳しい数値を指定しない
厳しい数値を指定するほど高品質になるとは限りません。
部品の用途に必要な範囲を超えて表面を滑らかにすると、加工費や納期が増える一方で、機能上の効果がほとんど得られないことがあります。
対象面を明確にする
図面のどの面に表面粗さを適用するのかが不明確だと、加工会社が正確に見積もれません。
重要な面だけに個別指定を行い、その他の面は一括指示にするなど、対象を明確にします。
後工程を考慮する
熱処理、めっき、アルマイト、黒染めなどを行う場合、後工程によって表面の状態や寸法が変化する可能性があります。
最終的に必要な状態から逆算し、切削、熱処理、研削、表面処理などの順番を検討します。
用途を加工会社へ伝える
数値だけでは、なぜその表面粗さが必要なのか判断できない場合があります。
摺動面、シール面、接着面、外観面など、部品の用途を伝えることで、より適切な加工方法を検討しやすくなります。
宝栄工業の精密金属加工
宝栄工業株式会社では、広島市を拠点に、NC旋盤、マシニングセンタ、NCフライス、ワイヤーカット、平面研削盤などを活用した精密金属加工を行っています。
鋼材、アルミ、ステンレス、高硬度鋼、工具鋼、銅、真鍮など、さまざまな金属材料に対応しています。
単品試作から多品種・小ロット部品まで、図面、材質、用途、必要精度を確認し、部品形状に合った加工方法を検討します。熱処理や表面処理を含む案件についても、協力会社と連携した対応が可能です。
表面粗さの指定方法がわからない場合や、切削加工と平面研削のどちらが適しているかわからない場合も、まずは図面と使用条件をご提示ください。
よくある質問
- 表面粗さとは何ですか?
-
表面粗さとは、加工した金属表面にある細かな山や谷の状態を数値で表したものです。摩擦、密着性、耐摩耗性、外観などに影響します。
- RaとRzは何が違いますか?
-
Raは加工面全体の平均的な凹凸を表し、Rzは基準長さ内の最も高い山と最も深い谷の合計を表します。Raは全体的な滑らかさ、Rzは局所的な大きな凹凸の確認に適しています。
- 表面粗さの数値は小さいほどよいですか?
-
必ずしも小さいほどよいとは限りません。用途によっては潤滑油を保持するための粗さや、塗装・接着に適した表面状態が必要です。部品の機能に合った数値を指定することが重要です。
- 寸法公差と表面粗さは同じですか?
-
異なります。寸法公差は完成寸法に認められる範囲を示し、表面粗さは加工面の細かな凹凸を示します。寸法が公差内でも、表面粗さが要求を満たしていない場合があります。
- 切削加工だけで滑らかな面に仕上げられますか?
-
必要な表面粗さ、材質、形状、加工設備によって異なります。NC旋盤やマシニングによる仕上げ加工で対応できる場合もあれば、平面研削などの追加工程が必要になる場合もあります。
- 表面粗さを細かくすると加工費は上がりますか?
-
追加の仕上げ加工、工具管理、測定、検査などが必要になるため、加工費が上がる場合があります。必要な面だけに適切な粗さを指定することが大切です。
- 古い図面のRz指定でも見積もりできますか?
-
見積もりは可能ですが、古い規格と現在の規格ではRzの意味が異なる場合があります。図面の作成年や適用規格を確認し、加工会社と認識を合わせる必要があります。
まとめ
表面粗さは、金属部品の加工面にある細かな凹凸を数値で表したものです。
代表的な指標にはRaとRzがあり、Raは平均的な凹凸、Rzは最も高い山と最も深い谷の合計を表します。
表面粗さは、部品の摩擦、密着性、耐摩耗性、外観などに関係します。ただし、必要以上に厳しい数値を指定すると、加工工程や検査が増え、費用と納期に影響する可能性があります。
図面を作成するときは、部品の用途、相手部品との関係、後工程などを考慮し、機能上必要な面に適切な表面粗さを指定することが重要です。
宝栄工業株式会社では、NC旋盤、マシニングセンタ、フライス盤、ワイヤーカット、平面研削盤などを使用し、さまざまな精密部品加工に対応しています。
表面粗さ、公差、材質、加工方法について不明な点がある場合も、図面や用途を確認したうえで加工方法をご提案します。広島市で精密金属加工、試作、小ロット部品加工をご検討の方は、お気軽にお問い合わせください。

